5.英国の食事はまずいか?
「イギリスで暮らしたいなあ。」と言うと、多くの方がおっしゃるのは「イギリスは食べ物がおいしくないってよ。」というものでした。
なにが根拠なのかは人によって違うのでしょうが、住んだことのある方の意見なのでしょうか。
確かに小説、エッセイ、漫画の台詞でよく聞かされることではあるのですが…。
渡英を決意し、まずしたことといえば、語学(英語)の勉強ではなく、英国関係の本を読み"英国"の暮らし勉強をすることでした。どーせ、慌てて英語を勉強したって、一番苦手な科目が、すぐに上達するとは思えなかったし・・・。
数年前初めて訪れたロンドンでの食事はどうだったろう?と思い出そうとしたのですが、これがまた難しい(笑)。
ホテル・シャーロックホームズでのディナー、大英博物館前のカフェでのランチ、朝食は確か移動時間の関係でパック詰めのクロワッサンとオレンジ・・・。どれもまずかった記憶はないけれども、特に心に残るモノもありませんでした。
これでも味には煩いほうだし、一緒にいた友人でも「まずい。」と言った人はいなかったような。
私の結論から言うと"英国の食べ物はまずくない"です。「え〜!」という声が聞こえてきそうではありますが。
すべての事柄において「一般論」なるもの=Allではないということは多くの人の肯くところであるかと思います。
好みや店のランクによっても異なるし、家庭によっては普段の家庭料理や調理方法がまずいのは確かだし、味に鈍感な(無頓着な?)人も多いのも事実だとは思いますが・・・。
何がまずくて、何がおいしかったのか
■Home Stay
1年間の滞在のうち、2回食事付の家庭にホーム・ステイをしました。
ホーム・ステイと言っても、色々なタイプがあります。「パンや紅茶、調味料はかってに使って。それ以外は自分で。」というものもあれば、全て自分で賄うというもの、朝・夕付のもの、3食付(ランチボックス付)のものまで。)
どちらのお母さんにも、レンジ(或いはオーブン)でチンすれば食べられるレトルト食品や、豊富な缶詰は必需品でした。
普通の冷蔵庫の他に大きな冷凍専用庫があるのも珍しくはないほど、そしてそのレポートリーの広さが英国家庭に冷凍食材が如何に必要か、物語っています。
[1]アイルランド人のお母さんとイタリア人のお父さん
さすが、というか膨大な量の夕食で、デザートにはカスタードソースに沈んだアップルパイ等が毎晩添えられていたし、カレーライスなどもありバラエティーにも富んでいました。(1週間サイクルだった様な気がするっていうことは良い方かと。)
朝ご飯は質素で(パンのみ)、毎晩規則正しく夕食をたくさん食べました。
味付けはどれも同じ感じがしてしまうのは既成のソース類を多様するからだと思います。
実は"イタリア人"ってことでちょっと期待してしまっていたのですが、長く英国に暮らすと食事も英国式でなれてしまうようで・・・。もともとアイルランド人の食事は英国式と似ている(もと素朴な田舎料理風)ので、どちらにせよ飽食になれ、さまざまな素材を使う母の手料理に慣れた私にとってまずくはないけれど、物足りないものでした。
[2]イギリス人のお母さんの料理
もう一件の家庭では大変ひもじい思いをしました。
夕食はマカロニに市販のクリームソースを絡めたものだけで、しかも量も少ないので、その時期毎日のようにベーカリーでパンやケーキを買って、食後に食べるという生活をしてしまいました(体重はこのせいで急増)。
その頃に、盛んに買い食いに走っていて、ケーキやパンのお店を食べ歩きました。
ケーキは店によっては甘すぎて食べられなかったけれど、視覚的な美しさに誘われつい買ってしまうのが曲者。
パイやキッシュは日本よりも豊富で、サンドイッチ感覚で食べられる野菜のものも多くておいしい。
生粋の英国人のお母さんに食事を作ってもらう機会があったのは、この母子家庭で過ごした1ヶ月だけだったけれども、一番驚いたのはほうれん草。
いや、正確にはほうれん草のみならず、野菜全般だと思うけど、色が抜けて汁で染め物ができそうなほど茹でるのです。もう、ドロドロ。
味も栄養も抜け落ちた野菜にソースやチーズをおろしてかけて食べます。これはまずかった!
[3]子供の食事
さらに驚いたのは小さい子供たちの食事でした。
小学生以下の子供のいる家は3家族滞在しましたが、フレークやオートミール質素な朝食はともかく、夕食もお椀程度の器に、茹でたマカロニ、それにチーズを摩り下ろしただけの日がほとんどでした。
子供たちだけ早い時間に食事をとり、大人は9時ごろにテレビをみながら、膝の上にプレートを置き(TVディナーというらしい)、ちゃんとした(?でもあんまり良く見てなかったけど)食事をゆっくり食べます。
だからかでしょうか。英国の子供って痩せてる子が多かった…。
■SuperMarket & Stand
[1]スーパーは時間潰しにもってこい!
英国に行く友人に必ず立ち寄ることを薦めるのは、"マークス・アンド・スペンサー[Marks&Spencer]"や"テスコ[TESCCO]"といった地元おなじみのスーパーマーケットです。
1個から買える野菜や色とりどりのフルーツ、豊富なパスタやソース類、思わず自分で料理したくなること請け合いです。
チーズやワインも色々な国のものが揃っているし、日本食だって大きめなお店に行けば、材料は売っている(値段は3倍位したりして)ので、料理可能です。
でもそれは"英国の食べ物"ではなく、遠く離れた存在であることは間違いありませんが・・・。
でも、日本に比べて色々な国の人が住んでいるので食材は本当に豊富です。
住んで無くても、お土産のお菓子を買いに行くのも有効だと思います。
英国らしい、或いは空港で売っているお菓子も、安く買えます。私は海外旅行に行くと、必ず現地のスーパーでお土産探しをしています。
[2]買い食いしに街に出る
ポートベロー[Portbello]やカムデン[Camden]など、ガイドブックにものっているマーケット街にいくといたるところで、スタンド式の出店(屋台)が目につきます。
それは中華丼っだったり、ホットドックっだったり、国籍も種類も豊富に有り、買い食いを楽しむことができます(あまり食べる所は用意されていないので、道端で立ったまま・・・)。
手軽で安価なものが多いので、中央に遊びに行った折にはかなりお世話になりました。オレンジをその場で搾ってボトルにいれてくれるジューススタンドなど、日本ではお目にかかれないものも多々あって楽しいです。
[3]たまには外食でも
ロンドンにはガイドブックに載っている有名なステーキレストラン(私の滞在中は狂牛病騒ぎのピークだったので残念ながら行ってない)もあれば、シーフード専門店(こちらはツアコンの友人のくれた無料券で行った。とてもおいしかった。さとえ、ありがとー^_^)、有名なフレンチ、イタリーなどの高級店もあります。
パブで食べたオムレツもなかなかおいしかったし、学食で食べたベイクドポテトも安価ながらになかなか、空腹をみたしてくれるのでお気に入りでした。
当たり前なんだけど、出すものを惜しまなければおいしい英国が手軽に楽しめます。
(因みに日本食レストランも、かなり敷居の高めのお店もあります。お寿司もあります。でも英国で食べる価値はほとんどないと思います。お米が食べたくなったら、中華が安くてよいかも。)
What's English Food?
「イギリスに旅行に行くんだ!」って言う人に、「英国料理って何?!」ってよく聞かれます。たしかにおいしい料理はたくさんあるし、食材も新鮮な魚介類(英国人はあまり食べないみたいですが)も肉類も売ってたけど、日本料理やフレンチにあたる英国料理って何でしょう?
[1]某林望氏のエッセイを読んでみた
英国好きなら一度は読んだことがある(かもしれない)、林望氏のエッセイ本は、渡英前に3冊読みました。
その中の一冊、『イギリスはおいしい』(1980年出版)には、野菜をひたすら茹でる、老いも若きも茹でる、とにかく茹でること、それがとにかくまずいことが(味覚的にはおろか、舌触りも)、誠に説得力のある文章で綴られています。
それと調理の必要のないベークド・ビーンズ(煮豆)のことなど、「イギリスはまずい」ことが多々論じられているのです。
一説には英国人は塩味に疎いらしいのですが、本当のところはわかりません。でも確かに、味がない(=まずい)物が多かったことように感じました。
散々、「うわー、そんなにまずいんだ。」と涙した後に氏の一言。「数ヶ月食べつづけるとおいしく感じる」・・・。慣れって恐い・・・。(でも著書を一度読んでみてほしい。おいしいものも書いてあるので。)
[2]ブランチか、ランチか、はたまたティータイムか?
日曜日に限って、ときどきちょっと違った様相の英国家庭を見ることができました。
お母さんは朝からいつも以上に忙しそうで、すでにキッチンにはアップルパイやミントパイが焼き上がっているようだし、お父さんは冬のあいだは使っていないらしいガラス張りのサンルームのような部屋(少々難あり、すきまあり)のブラインドをあけ、掃除をしています。
朝ご飯も食べず動き回っていたかと思うと、お昼近くになって親戚や仲の良い友人が次々に訪れ、ダイニングの上には普段見たことのないほどの皿が並ぶのです。
一通り支度がすむと皆でテーブルを囲み長い、長ーい昼食(?)が始まります・・・。
ちょっと優雅で「あら、まあっ」って参加したくなるのですが、ホスト・ファミリーによっては「あなたは出掛けるんでしょう?!」って・・・そう、言われちゃ出掛けるしかない・・・勿論、全ての家庭においてこのような待遇だったわけではありませんが・・・。
(収入のために学生を置いている家では、結構「家族」と区別されたときもあった。家族同様に扱ってくれた所もあったし、さまざま。)
[3]I Love Afternoon Tea!
[2]の風景が英国中流階級(?)のアフタヌーン・ティー[Afternoon Tea]にあたるのでしょうか。
「英国でおいしいのは紅茶とスコーンぐらいよ。」と某漫画家がエッセイの中で言っていたけれど、「本当にその通り!」。
スーパーで売ってる"50パックいくら"みたいなティーパックさえおいしく感じてしまいます。
友人の意見では、あの石灰の含んだ水が紅茶に合って良い味になるのではないか、ということですが、本当のところは謎です。
小麦粉も日本のものとは違うので、同じ焼き方をしてもスコーンがおいしく作れます。
スコーンはシンプルなものだと本当に手間も時間もかけず作れるので、一時期本当にお金がなかった時、そればっかり作って食べていました。
小麦粉、卵、牛乳・・・どれも英国ではとても安いのです。
クロテッド・クリームもどこででも売っているので(日本だとまず、生クリームが代用されている。でも全然ちが〜う!)、手軽にアフタヌーン・ティーを楽しむ英国の風習にどっぷり浸れます。
そして滞在中、私がいたく気に入ったのがホテルでの豪華アフタヌーン・ティー。
これについては後日、御勧めホテルも含め詳しく紹介したいと思います。
27th May 1999 |