日本の248番目の元号『令和』(れいわ/REIWA)の第一印象は、「涼やかでいいんじゃないかな。でも読みにくいかな」でした。が、出展が万葉集の雑歌ということで調べていくと、なかなか歌の美しさに「綺麗でよいじゃないか!」に変わっていました。
考案は万葉学者の中西進(なかにしすすむ)・大阪女子大名誉教授。官房長官が掲げた『令和』の書は内閣府大臣官房人事課事例係の事例専門官(国家公務員)であり書家でもある茂住修身(もずみおさみ)氏。
『昭和』から『平成』に変わったときは、あまり関心がなかった(多分、あわただしかったし、まだ歴史や古文にあまり関心が無かったから)年号ですが、結構気になることがあったので色々と『令和』について調べてみました。
『令』という漢字の意味
『和』は調べることもなく、平和、和やか、平らか、穏やかという意味ですが、『令』はどうなのでしょうか。
①法律、法令、②公文の一種、ふれぶみ、おふれ。命令文、③地方長官、④ヨい、⑤他人の血族の敬称、⑥…をシて、…シむ、させる、⑦おおせ。いいつけ。さしず。命令、⑧モし、仮設の語、⑨時令。時期。
社民党の人が「命令の『令』の字」ということをおっしゃっていましたが、確かに少し政治的な雰囲気もなくもありません。
万葉集から~色々な書き方
ニュースを見ていると、引用されている万葉集の色々な書き方が出てきます。確か中学生のときに古文で習ったような気がしますが、あまり覚えていません。
例えば、これは「白文」というものでしたでしょうか?
気淑風和
字面が美しくて素敵なんですが、2列目の「気淑」は意味を知らなければ理解できなさそうです。次は意味がわかりやすいですが、「書き下し文」で良かったでしたっけ??
時に初春の令<よ>き月、気淑<よ>く風和<なご>み、梅は鏡の前の粉を披<ひら>き、蘭<らに>は珮の後の香を薫らす。
佐佐木信綱. 万葉集(現代語訳付)
引用された文章は、梅の下での酒宴を優美に描写しているのですが、その中から2つの漢字を取っています。
『和』となるに『ヨい・時期』、「穏やかに良くなる」と解釈したのか、素晴らしいな、と思っていたら、もともと「令月」は、中国の古典に「令月吉日」の記述がある通り、吉祥の月を示すそうです。「令」にはもともと、美しいものを形容する意味が含まれていて、その当たりも含め日本の古文とはいえ、そもそもが起源である中国の影響は少なからず残るのも道理です。
中国の元号
日本の文化と中国の文化は、特に起源という観点で考え古い時代を思えば切り離して考えられるものではないと個人的に思います。
とは言え、日本人はただたんに「日本の書」を選びたがっただけですが(中国排除とまでは考えていない)、ちょっと過剰反応している中国メディアもあり、「結局は中国の文化が由来だ」と言わないと気が済まない、といった感じのようです。
中国の長い歴史の中には627年-649年の『貞観』(じょうがん。日本では859年-877年)、1009年に終わる『明治』(めいじ。日本では1868年-1912年)という日本と同じ元号もありますが、1949年(明治24年)からは西暦が用いられ、現在では元号というものはありません。中国が起源ではありますが、中国は元号という文化を捨ててしまったと言えます。
因みに韓国も元号はありましたが、中国に遅れること13年、1962年(明治37年)からは西暦になっています。韓国は国民の30%以上がキリスト教(プロテスタントとカソリック)なので、キリストの誕生の年(実際は若干違うらしいですが)を元年として数える年号に早々にシフトすることは、中国よりは違和感はないかもしれません。
『令和』以外の候補
1日遅れて翌2日に、そのほかの元号候補が明らかになりました。
久化<きゅうか>
広至<こうし>
万和<ばんな>
万保<ばんぽう>
出典は「英弘」「広至」が日本の古典(国書)、「久化」「万和」「万保」が中国の古典からということですが、「英弘」「広至」は人の名前っぽいし、濁点が使われている「万和」「万保」はなんだか重たい。「久化」は字面が美しくない…ということで、もし私が選定者の中に居ても(居るはずないけれど)『令和』を選んでいると思います(笑)。
しかも「広至」は秋篠宮殿下の呼び名「皇嗣」(こうし)と同じ音なので、もし決まっていたらとても面倒なことになった気がしますね。
余談ですが、つい最近まで「次の天皇はみな『皇太子』」と思っていたのですが、Wikipediaによると、「次の天皇はみな『皇嗣』」で、その中で今上天皇の子どもに当たる人を「皇太子」と呼ぶそうです。
『令和』の正しい発音は?
アナウンサー室でも話題になっているらしい、『令和』(れいわ)の発音。平坦に読むのか、それとも『れ』にアクセントを置くのか、私も気になっていました。
できることなら、正しい発音で読みたい。
でも、ある局のアナウンサーも混じったやりとりでは、「どちらでも良い」という結論を出していました。
え”~~~~~~。
それで良い、と割り切れない自分がいます…。
西暦か、元号か問題
書類など書くときに、特に明示していないと「どちらを使うのか」迷う、西暦と元号。
読売新聞社の全国世論調査での「ふだんの生活で元号と西暦のどちらを使いたいか」を聞くと、「どちらも同じくらい」特に答えた人が5割もいたことに驚きました。(「西暦」が24%、「元号」が22%)
元号の制度を続けることを支持する人にいたっては82%とかなりの高い割合で、私も文化としての元号の使用は続けたいと思っています。
でも、西暦で書類は統一してくれた方が面倒がないんだよな…と言ったら家族に、「強制的に使う場がないと、使わないほうは忘れちゃうよ。」と。
…確かに。では、どちらでも構わないので迷わないように「西暦か年号か」はっきりとわかるようにして欲しいです。
『令和』を英語にすると?
『REIWA』だそうです。Lではなくて、R。英語発音的には、「れぅぃわ」ってなりそうです。
日本語でも、「れいわ」と一語づつ発音するのは結構大変で、「れーわ」って言ってしまいそうです。特に、「令和天皇」(現皇太子殿下が天皇に即位後、更に次の天皇が即位されてからの呼び名)と「天皇」をつけると意外に発音しにくくて「れーわてんのう」って言うこと間違いなし。
因みに元号は英語で「ERA NAME」。結構そのままなんですね。でも、勉強になりました。
2019年5月1日
天皇の即位の日となる令和元年(2019年)の5月1日は国民の祝日です。どんな1日になるのか楽しみです。
因みに、即位されるのは5月1日ですが、即位礼正殿の儀は令和元年10月22日です。即位後5か月以上してからの式典なのね…。
そしてこの日も祝日です。…火曜日…飛び石じゃないか(チッ)。